赤司竜彦(メディコム・トイ)の “華麗なるプレゼン” ひなたかほりさん(アーティスト)前編

  創造するキーマン

赤司竜彦の
“華麗なるプレゼン” Vol.3
ゲスト・ひなたかほりさん(アーティスト)
【前編】

2020 03 06

株式会社メディコム・トイの代表取締役社長を務める赤司竜彦さんが、毎回深掘りしたい方とトークセッションをしながら「何か一緒におもしろいものを作りましょう!」とプレゼンする対談企画。今回のゲストは、ツノが生えた猫のキャラクター「MORRIS(モリス)」で世界的に注目を集めるアーティスト、ひなたかほりさん。人気キャラクターの誕生秘話に迫ります!

赤司竜彦 赤司竜彦
 赤司竜彦(メディコム・トイ)の “華麗なるプレゼン” ひなたかほりさん(アーティスト)前編
  創造するキーマン

赤司竜彦の
“華麗なるプレゼン” Vol.3
ゲスト・ひなたかほりさん(アーティスト)
【前編】

2020 03 06

株式会社メディコム・トイの代表取締役社長を務める赤司竜彦さんが、毎回深掘りしたい方とトークセッションをしながら「何か一緒におもしろいものを作りましょう!」とプレゼンする対談企画。今回のゲストは、ツノが生えた猫のキャラクター「MORRIS(モリス)」で世界的に注目を集めるアーティスト、ひなたかほりさん。人気キャラクターの誕生秘話に迫ります!

赤司竜彦 赤司竜彦
 

第三回ゲスト
ひなたかほりさん

Profile
2008年、モンチッチドレスデザインコンテスト最優秀モンチッチ賞受賞、 2009年、FEWMANY AWARDファイナリスト選出をきっかけにアーティスト活動を開始。 手描きや手作りのあたたかさを活かしたノスタルジックな作風で、 絵画から手芸、立体造形まで表現の技法は多岐に渡る。2016年、自身でキャラクターとしての展開を考え、デザイン、造形した「Morris The Cat with Antlers」を発表し世界中で人気に。国内だけでなく、海外のイベント会場やギャラリーでも作品の展示・販売、サイン会、ライブペイントなどを行っている。

「今では、父が私のもの作りを手伝ってくれています」(ひなた)
「それは、いい話だなあ(笑)」(赤司)

赤司 今回の「華麗なるプレゼン」は世界的な注目を集めている人気作家さんをお招きして、いろいろお話を聞いていきたいと思います。そんな今回のゲストは、ひなたかほりさんです。
ひなた よろしくお願いします。
赤司 いまこれだけ自己表現の手段が広がっている中、表現者ではないお仕事をされていて、なんとなく自分も何かモノを作ってみたいなと考えている方が世の中に実はたくさんいらっしゃると思うんです。なので、まずはひなたさんに作家になった経緯から聞かせてもらってもよろしいですか。
ひなた 私はもともと子供の頃からモノを作ったり絵を描いたりするのが好きではあったんですけれども、将来作家になろうとは思っていなかったんです。なので大学も普通の大学に行って。
赤司 確か経済学部でしたよね。
ひなた そうです。普通の大学に行ったのも理由があって、兄が美術高校から美大に進むコースを先に進んでいたので、母から「家に芸術家を志す者は一人でいい」と言われていまして。
赤司 それってどういう意味だったんですか?
ひなた うちの父が絵を描く人だったので、休日はアウトドアテーブルを車に積んでみんなで絵を描きにいくような家族でした。でも絵を仕事にして作家として生きていくということは、夢を追う生活になるわけで、成功するとは限らないから母は心配していたんだと思います。半分冗談もあったかもしれないですけれども、私は真に受けて自分はまっとうに就職するものだと思っていました。
赤司 なるほど。
ひなた ちなみに、いま父は私がモリスを作るのを手伝ってくれているんです。
赤司 いい話だなあ(笑)。お父さんはひなたさんのお手伝いができて嬉しいでしょうね。
ひなた だといいですけれど(笑)。でも、学生時代はそこまで作家になりたいという希望もなくて。高校の頃、舞台の世界に憧れて衣装のデザインを描いたり、裏方で何かものを作ったりするのが好きだなっていう意識もありつつ、普通の大学に進学したんです。それで就活の時期、キャラクターデザインに関わる業界に進みたくて、おもちゃメーカーなどを受け始めたんですけれども、OBの方から「おもちゃメーカーに入ったからといって直接もの作りをする仕事に就けるとは限らないよ」というお話を聞いて、それでもおもちゃ会社で働きたいのか、それとも自分で手を動かして、ものを作りたいのかを改めて考えたんです。それで大学卒業後に「しばらく作家になる挑戦をさせてほしい」と親にお願いしました。
赤司 就職しないで作家になる修行をするみたいな感じですか。
ひなた そうです。大学4年生のときにキャラクター関連のコンペをいろいろ受け始めたんです。やっぱり何の足がかりもなしに作家になるのではなく受賞歴があった方が、「じゃあやってみなさい」って言ってもらいやすいと思いまして。
赤司 いわゆるキャリア的な部分ですよね。
ひなた はい。そんな中応募した株式会社セキグチさんが主催する「モンチッチドレスデザインコンテスト」(註1)に応募して最優秀賞をいただくことができました。部門が2つあるのですが、第1回はイラスト部門、第2回はドレス制作部門で2冠に輝くことができまして。

(註1)1974年の誕生以来、世界中で愛されるキャラクター「モンチッチ」のドレスデザインを一般公募したコンテスト。イラスト部門とドレス制作部門があり、優秀作品は賞金が与えられたほか百貨店などで展示された。2008年に第1回を皮切りに、2014年の第5回まで開催。ひなたさんが第1回でイラスト部門の最優秀賞を受賞したデザインはメディコム・トイより商品化され、2019年11月『SMAK! モンチッチ -HAPPY GIFT BOX-』として数量限定で発売。

SMAK! モンチッチ -HAPPY GIFT BOX- ¥12,000
全高約300mm
(C) 2020 Sekiguchi Co., Ltd.
http://www.medicomtoy.co.jp/search/14731.html

ひなた その翌年には、FEWMANY AWARD(註2)という当時クリエイターの登竜門と言われていたコンテストのファイナリストに選んでいただきました。受賞はかなわなかったんですけれども、どちらかというと作家としての一歩を踏み出すきっかけになったのはFEWMANY AWARDなんです。いろんなご縁をいただいて、FEWMANYでの展示のお話をいただいたり、「ボノロン」というセブンイレブンなどで配布されている絵本冊子の編集をされている方から挿絵のお仕事をいただいたり、先輩作家のDEVILROBOTS(註3)さんから童謡のDVDの作画のお仕事をいただいたりしました。

(註2)現在、新宿マルイアネックス、銀座ロフトで店舗営業しているショップ兼ギャラリーのFEWMANYが2009年に主催した新人アーティストの登竜門的コンテスト。総勢約130名のご応募の中から選ばれたファイナリスト23名の中から審査員と一般の皆様の投票によってグランプリが決定。
(註3)オリジナルキャラクター「トーフ親子」をはじめ、デザイン、キャラクター開発から各種広告の企画制作まで幅広い業務内容を手がけるクリエイター集団。


赤司 この流れからセキグチさんとモンチッチのリブランディングの企画を御提案させていただきSMAK!というシリーズが始まりました。SMAK!とは“SEKIGUCHI & MEDICOM TOY ARTISTIC MONCHHICHI PROJECT featuring KAORI HINATA!”の略称で今後も新しいラインナップが順次登場します。余談ですけれども、モンチッチドレスデザインコンテストは現在終了しています。セキグチの社長さんにどうして続けないのか伺ったら「何回やってもひなたさんが優勝になるからしばらくお休みさせていただきます。」というお話がありました。
ひなた そうだったんですか!? それは知りませんでした。FEWMANY AWARDも今はもう続いてないようですね。
赤司 当時FEWMANYは新宿伊勢丹近くの路地にある路面店でしたね。上にバーがあって。
ひなた そのバーがすごくご縁をつなぐ場になっていたんです。「Human Harbor (ヒューマン・ハーバー)」 というお店で。そこで活躍されている先輩方と知り合ったり、広告代理店の方からお仕事をいただいたり。
赤司 高感度な代理店の人がそこで新しい作家を見つけて一緒に仕事しましょう、みたいな感じですね。そこからフィギュア作家になろうと思われたのは?
ひなた 絵描きからフィギュア作家に意識を持っていったきっかけが「キノラ」というキャラクターでした。それもコンペだったんですけれども。
赤司 MAX TOYさん主催で開催された怪獣デザインコンテスト(註4)ですね。
(註4)2013年、アメリカのソフビメーカーMAX TOY (マックストイ)と7名の日本人女性アーティストによる「怪獣ギャルズ(KAIJU GALS)怪獣デザインコンテスト」。シンガポールのトイファンサイトTOYS REVILの協力の元、アーティストによる怪獣デザインを公開、 お気に入りのデザインに投票してもらい、最も投票数を獲得したデザインはMAX TOYから2014年にソフビで製品化された。
ひなた そうです。日本人女性イラストレーター限定で。それまでは怪獣というと男性が作って男性が買うものだったので、女性が怪獣をデザインしたら面白いんじゃないかという企画でした。
赤司 かなり斬新な取り組みでしたよね。
ひなた 私は2つのデザインを出させていただいて、ひとつは羊が怪獣になったもの、もうひとつはキノコが怪獣になったもので、キノコの怪獣の方の「キノラ」で特別賞をいただいたんです。人気投票では羊の方が好評だったんですけれども、ソフビにするときにキノコの方がシンプルなデザインでソフビにしやすいから商品化はキノコ怪獣のソフビにしましょうということになりました。



「ひなたさんは、このSNS時代のアーティスト
のファーストジェネレーション。」(赤司)

「海外を視野に入れれば、アーティストとして
生きていけるかも、って思いました」(ひなた)

赤司 ひなたさんの中で平面から3Dのキャラクターデザイナーへの意識の変化があったわけですね。そこから「モリス」にどういう風につながっていったんですか?
ひなた 一番のきっかけは「TAIPEI TOY FESTIVAL」(註5)という台湾のイベントがあって、そこにキノラを持っていこうっていうことになって、先輩や仲間たちと一緒にチームで台湾に行ったんです。そこでの盛況ぶりを見て、こんな世界があるんだっていうことに気づいたことですね。

(註5)2004年から毎年台湾で開催されている大規模な創作玩具イベント。デザイナーズトイと呼ばれるオリジナルフィギュアを作家自ら販売し、文化交流の場になっていることから日本からも数多くのアーティストが参加している。
赤司 台湾では日本のトイが大人気ですよね。
ひなた アートに対しても日本と感覚が違うんです。
赤司 どういう風に違いました?
ひなた 例えば、日本だと気に入った絵もポストカードでいいやって思うお客さんが多い中、そのイベントでは「これはコピーですか?」って聞かれて、原画ではないならいらないと。原画だったらいくらでも買う。言い値で買うみたいな。アートを買うっていう文化がちゃんとあって。「アートでは生活できない」という意識がどこかにあって、日本で過ごしていたのが、「海外を舞台にすれば、アーティストとして生きていけるかも」っていうことに気づいてしまったんです(笑)。それで来年もこのイベントに出たい、そのために新しいキャラクターを作りたいと思って、そこから「モリス」に繋がりました。なので、海外のイベントに出たことがきっと一番大きかったと思います。
赤司 私はもしかするとこのマーケットだったらキャラクターを作ってこれでご飯を食べて生きていけるかもしれないという。そんな感じですね。
ひなた はい。2016年の「TAIPEI TOY FESTIVAL」で初めてモリスを販売しました。
赤司 これがまた絶妙なタイミングなんですよね。トイカルチャーが世界に向けて一気に広がった時期と、スマートフォンの普及、SNSの発展、全部関わっているんです。そのキャラクターアーティストとしてファーストジェネレーションだと思っているので、一番良いタイミングでいろんなところを踏んだなという感じがします。
ひなた ちょうど女性作家にも注目が集まっていた時期だったので、日本人女性作家ということにすごく助けられたなって思っています。ソフビ人形ってやっぱり日本がオリジナルだと思われているところがあるので。本当にタイミングが良かったなっていう話をよく仲間内でしています。今はまた状況が変わっているので。
赤司 運と縁とタイミングってあって、たぶん何かひとつ違っただけで全然違う未来があったのかなという気がします。こればっかりは、ひなたさんが持っていたんだろうな、と思いますね。
ひなた ちょうどいい波が来たときにポンと乗ることができたんだな思います。

右から、MORRIS Royal Blue Coat、MORRIS British Green Coat、MORRIS Vintage Red Coat
全高約130mm
(C) KAORI HINATA

赤司 今では世界中のファンが手にしている「モリス」ですが、このキャラクターの着想秘話って何かありますか? 
ひなた 「モリス」は私がそれまでいろんなモノを見て、いいなと思ってきたイメージの凝縮じゃないかなと思っているんです。色合いだったり、姿かたちだったりとか。昔からパディントンだったり、ピーターラビットだったり、服を着た動物が大好きで。二本足で生活している動物。イラスト、絵描きメインでやっていた時も、そういう絵を描いていました。
赤司 確かに昔のドローイングを拝見すると、お洋服を着て擬人化したキャラクターが多かったですね。
ひなた そうですね。顔もそこまでデフォルメせず、少し野性味を残して。あとはイギリスへの想いと、やっぱりファンタジーが好きなので、羽が生えていていたり、ツノがあったりすることにドキドキするんです。
赤司 いろんなものが凝縮された答えがモリスになったわけですね。このあとキャラクターデザイナーになられたひなたさんが私と会うわけです。それも本当に偶然で、もともと別の作家さんに絵本(註6)のオファーをしたとき、打ち合わせの場に2人の作家を紹介しますと連れてきてくださったうちの一人だったんですよね。ひなたさん含む3人の作家さんの作品を絵本と立体で展開させていただいた中で、極端にモリスのセールスがよかったんですね。びっくりするぐらい。これに関してはいまだに誰も説明がつかないんです。2001年にベアブリックがなぜあんなにヒットしたのかと同じように計算できない。最初にひなたさんとご一緒させていただいたガチャガチャのモリス(註7)を納入した翌日に「追加であと5万個ください」って言われて。一体何が起きているんですかっていう話をしたら「圧倒的に数が足らないんです」っていうSOSを出されて。
(註6)メディコム・トイが展開する16ページの手の平サイズ(W100mm×H75mm)のミニ絵本「TEHON」のこと。ひなたさんのTEHON『つのがはえた猫』は2017年6月発売。

TEHON「つのがはえた猫」 ¥500
W100mm×H75mm
(C) KAORI HINATA
http://www.medicomtoy.co.jp/search/12308.html

(註7)メディコム・トイが展開する「VAG(VINYL ARTIST GACHA)」のこと。モリスは2017年9月発売のシリーズ12で初登場以来、数多くのバリエーションが発売されている。

JAM MORRIS ¥70,000
全高約600mm
(C) KAORI HINATA
http://www.medicomtoy.co.jp/search/14141.html



(グリーン)
PROP MORRIS(オリジナル)¥32,000
全高約260mm
(C) KAORI HINATA
http://www.medicomtoy.co.jp/search/14496.html

(レッド)
PROP MORRIS(ブルーアイズ)¥32,000
全高約260mm
(C) KAORI HINATA
http://www.medicomtoy.co.jp/search/14819.html

ひなた そうだったんですね!
赤司 何かこれ聞き覚えあるなと思ったら、2001年にBE@RBRICKを発売したときとまったく同じ状況だったんです。ここでベンダーさんの希望通り納めるとマーケットが一気に膨らんで、万が一滞留してしまった場合モリスが死んでしまわないかとすごく心配になったので、少し数を落としたんです。そんなところからモリスとの関係が始まって。2019年にご一緒させていただいた「JAM MORRIS」や「PROP MORRIS」は高価格帯商品ですが、2018年のかなり早いタイミングでひなたさんにご相談さしあげていたと思います。
ひなた はい。こんなにたくさんご提案いただいて大丈夫かなと思っていました(笑)。後編に続く>>

株式会社メディコム・トイ
代表取締役社長

赤司竜彦さん

1996年、株式会社メディコム・トイを設立。
2000年、自社商標のブロックタイプフィギュア「KUBRICK」(キューブリック)、2001年にはクマ型ブロックタイプフィギュア「BE@RBRICK」(ベアブリック)を発表し、世界中のアーティスト、ブランド、企業、キャラクターなどと多彩なコラボレーションを発信し続けている。 
photo:Masako Nakagawa

  • PHOTO&EDIT:Daisuke Udagawa(M-3)
  • TEXT:Kunihiko Shinno
お気に入り記事に追加する

SHARE THIS SV MAGAZINE

  • LINE

SV MAGAZINE RANKING 人気記事

RECOMMENDCURATORSおすすめキュレーター

FRESH SV MAGAZINE 最新記事