赤司竜彦の
“華麗なるプレゼン” Vol.2
ゲスト・末安弘明さん(KIDDILデザイナー)【前編】

赤司竜彦の
“華麗なるプレゼン”Vol.2
ゲスト:末安弘明さん(KIDILLデザイナー) 【前編】

2020 01 06

株式会社メディコム・トイの代表取締役社長を務める赤司竜彦さんによる対談企画。ここでは毎回、赤司さんが深掘りしたい方とトークセッションをしながら、「何か一緒におもしろいものを作りましょう!」とプレゼンする場に。今回は気鋭のファッションブランド、KIDILL(キディル)のデザイナー末安弘明さんをお招きして、知られざるブランドの歴史、そして華麗なるプレゼンへ、その結果はいかに!?

赤司竜彦 赤司竜彦
赤司竜彦の
“華麗なるプレゼン” Vol.2
ゲスト・末安弘明さん(KIDDILデザイナー)【前編】

赤司竜彦の
“華麗なるプレゼン”Vol.2
ゲスト:末安弘明さん(KIDILLデザイナー) 【前編】

2020 01 06

株式会社メディコム・トイの代表取締役社長を務める赤司竜彦さんによる対談企画。ここでは毎回、赤司さんが深掘りしたい方とトークセッションをしながら、「何か一緒におもしろいものを作りましょう!」とプレゼンする場に。今回は気鋭のファッションブランド、KIDILL(キディル)のデザイナー末安弘明さんをお招きして、知られざるブランドの歴史、そして華麗なるプレゼンへ、その結果はいかに!?

赤司竜彦 赤司竜彦

第二回ゲスト
末安弘明さん

1996年、大村美容ファッション専門学校卒業。2002年に渡英。独学で服を作り始め、2004年に自身のブランド「HIRO(ヒロ)」を立ち上げる。2014年、KIDILL(キディル)をスタート。「KIDILL」とは、カオスの中にある純粋性を意味した造語。自身が90年代に体験してきたロンドンパンク、ハードコアパンク、ポストパンク、グランジ、などのカルチャーを軸に、現代の新しい精神を持った不良達へ向けた服を制作。2017年、「Tokyo 新人デザイナーファッション大賞」プロ部門の東京都知事賞を受賞。

「デザイナー志望の人たちのために
イギリスでのエピソードを!」(赤司)

「いや、俺を見習っちゃダメです(笑)」(末安)

赤司 今回はKIDILL(キディル)のデザイナー、末安弘明さんをお迎えしました。
末安 よろしくお願いします。
赤司 もうすぐ発表になりますが、KIDILLと2020年春夏と同時展開となる新作のBE@RBRICKを作らせていただきました。私がKIDILLを最初に知ったのは、PR01.(ピーアールワン)のプレスルームなんです。トップの方に遊びに来ないかと誘われて行ったら、「赤司さん、これいいよ!」って、いきなりゴブランのウルフの上下を着せられて。
末安 1番最初のコレクションですね。ゴブラン織りで作った狼の総柄セットアップ。
赤司 「すごくいいね。どこのなの?」「KIDILLというブランドだよ」って。それから気になってサイトで調べていたら、デニムを断ち切ったものをニットに縫い込んだ不思議な服を見つけて。これほしい!と思ったらソールドアウトだったので、オフィシャルサイトの窓口用のメールアドレスに「すみません、あのニットがどうしてもほしいんですけど」ってメールを送ったんです。面倒臭い客として(笑)。
末安 いやいや(笑)。本当にありがたいことです。
赤司 そしたら末安さん自ら「ごめんなさい。あれ、前回のシーズンの商品なのでもうないんです」という内容の返信をくださって。それから、展示会へお邪魔させていただきました。
末安 その時初めて赤司さんとお会いして「メディコム・トイの代表です」と言われて、びっくりしました。
赤司 ちょうどメディコム・トイで「NY@BRICK」というネコをテーマにした新しいBE@RBRICKのシリーズが始まったばかりで、KIDILLさんのアイコンに三つ目のクマとネコがいるから、ぜひ一緒にやらせてくださいってご提案させていただいたのが最初のお仕事でした。

BE@RBRICK KIDILL BEAR
100% & 400%

NY@BRICK KIDILL CAT
100% & 400%
(2018年2月発売・現在は完売)

BE@RBRICK TM & (C) 2001-2019 MEDICOM TOY CORPORATION. All rights reserved.
NY@RBRICK TM & (C) 2016-2019 MEDICOM TOY CORPORATION. All rights reserved.

赤司 もちろんBE@RBRICKやNY@BRICKコレクターの方たちにも喜んでいただけたんですけれども、1番面白い反応だったのはサードジェネレーション、フォースジェネレーションのデザイナーさんたちだったんです。「えっ! KIDILLとやるんですか!?」みたいな。
末安 へえーっ! 
赤司 「うちもできないかな?」と多くの方たちから言っていただいたんです。なので末安さんって実はデザイナーズデザイナーだったりもするのかなと思いました。末安さんのこれまでのお話を伺いたいんですけれども、最初ブランドデビューされたときって、どんな感じだったんですか?
末安 2004年にロンドンで始めたので結構長いんです。最初はHIRO(ヒロ)ってブランドネームで、あくまで趣味で服を作っていたつもりがなんとなく3年持ったんですよね。
赤司 趣味感覚で3年!? それはすごい。
末安 途中ビザの問題で帰国しなくちゃいけなくなって、2008年に日本に戻ってからもブランドは継続させていて。HIROの服はすごく尖っていたし、「わかる人だけ買ってくれればいいや」と思いながら作っていました。けれども、ある日「それじゃダメだ」と思い、一旦10年という区切りでブランドを終了させました。そして11年目からはブランド名を「KIDILL」にし、リスタートをしたんです。
赤司 そもそも日本ではなくイギリスでブランドを始めようと思ったきっかけはなんだったんですか?
末安 単純にパンクミュージックとかUKのカルチャーの影響ですね。アレキサンダー・マックイーンやヴィヴィアン・ウエストウッドといったイギリスの服が大好きだったので、ちょっと住んでみようと思って。それまで美容師を5年やっていたので、ヘアメイクの仕事で生活費を稼いで、空いている時間に趣味で服を作っていたら、ちょっとずつ比重が逆転してきたんです。
赤司 将来デザイナー志望で、末安さんみたいに「私もイギリス行きたい」って方たちの参考になるような当時の話を詳しく聞かせてほしいんですけど。
末安 いや、俺を見習っちゃダメです(笑)。セントマ<※1>みたいな王道の学校に通ったわけではないし、全部独学だったので。
<※1>セント・マーチンズ 。ロンドン芸術大学の中のカレッジのひとつで、著名なデザイナーを多数輩出している。
赤司 それでも服を作れたわけですから。
末安 なんていうか……気合いですよね(笑)。作り方がわからないから最初の2年間ぐらいは服のリメイクをやっていたんです。リーバイスを買ってきて、その上に自分のできることを施すしかできなくて。
赤司 その頃、HIROを買ってくれたお客さんはどういう方だったんですか?
末安 最初のシーズンの時、カンナビスというセレクトショップのバイヤーさんが1番最初のコレクションを「うちの店が全アイテムを展開するから他に売らないでね」って全部オーダーしてくれたんです。で、次のシーズンからは「LOVELESS(ラブレス)」さんが、「じゃあうちも全部買うから」って。
赤司 そういえば、当時ラブレスに1着30万円くらいのかなり手の込んだブルゾンがありました。あれが欲しくて買いに行ったら全部売り切れてて。
末安 初日で全部売れたそうです。
赤司 HIROの服はめちゃくちゃかっこよかったです。もちろんKIDILLもかっこいいんですけど。
末安 あの頃は全部、自分の手で縫っていましたからね。プリントも全部自分でしていたし。大量に作れない服だからこその魅力があったと思います。
赤司 2000年代はHIROとかリバティーン<※2>とか、いわゆる古着をリメイクしてワンオフですごいものを作る人たちがファッションカルチャーにいましたよね。
<※2>ジョンソン・ハルティヒとシンディ・グリーンによりスタートしたLAのファッションブランド。古着をリメイクした洋服で2001年にコレクションを発表。服を大胆に解体して新しい息吹を吹き込み、現代美術家のダミアン・ハーストとのコラボレーションも話題に。
末安 とにかくリメイクが流行っていました。それこそ赤司さんも親交あると思うんですけど、野田凪さん<※3>。
<※3>1973年生まれ。女子美術大学卒業後、デザイン会社を経て独立。2003年に「宇宙カントリー」を設立し、プロモーションビデオやCM、CDジャケットなどのディレクションを手がける。2007年にアーティストのマーク・ライデンとファッションブランド「broken label」を立ち上げ。体の半分が熊、もう半分が別の動物の「Hanpanda」がヒット。2008年逝去。
赤司 はい。うちでも15年くらい前、BE@RBRICKや「hanpanda」のフィギュアを作らせていただきました。
末安 凪ちゃんが俺のリメイクした服が見たいって、わざわざロンドンのアトリエまで来てくれたんです。それからすごく仲良くなって、いっぱい買ってくれたんですよね。本の表紙で着てくれたこともありました。
赤司 彼女の感性はものすごく当時の服の色にマッチしていたと思います。立ち上がりの頃っていろんな思いが交差しますよね。少ないロットで尖った服を作るところからKIDILLになって、もう少しファッショニスタに向けてきちんとアプローチしようみたいな考えが末安さんの中に生まれたのかなと思うんですけれども、実際はどんな感じだったんですか?
末安 いろいろ変わってくるじゃないですか。デザイナーって。年齢も30歳を越えて、もうちょっとテキスタイルに凝りたいとか作る志向が少し変わったのかもしれないです。

赤司 KIDILLのファーストシーズン、セカンドシーズンは割とテーラード志向ですよね。
末安 あの頃はまだ単純に自分が着たいものを作っていたんですけど、それだけじゃ足りない、服自体に違う強さが入ってないと海外では通じないことがわかってきて、そこを分けて作るようになったんです。
赤司 自分が着たいラインと、きちんとショーピースとして作るもの。
末安 そうやって考え方を変えて作り始めてから、海外ウケがとても良くなりました。「トレーディング ミュージアム コム デ ギャルソン(TRADING MUSEUM COMME des GARCONS)」みたいなインポート中心のお店も買い付けてくれて。
赤司 海外のEコマースでもKIDILLさんのお洋服はよく拝見します。
末安 ただ、分けて考えて服を作るのって、なかなか難しくて。パブリック・イメージ・リミテッド<※4>をコレクションのテーマにしたんです。パンクとかロックがすごく好きだったので、本当に自分が好きなカルチャーと結びつけて服を作ろうってマインドに完全に切り替えたんです。そうなったら俄然調子が良くなりました。
<※4>1978年に結成したイギリスのロックバンド。略称はPIL。 セックス・ピストルズを脱退したジョン・ライドン(vo)が、ジャー・ウォーブル(Ba)、キース・レヴィン(Gt)を誘ってバンドを結成。その後メンバーチェンジを重ね、1992年に活動休止。2009年より再開。
赤司 PILから始まって、ダムド、スージー・アンド・ザ・バンシーズ、そして2020年春夏のテーマはバウハウス<※5>ですね。
<※5>1979年にデビューしたイギリスのロックバンド。演劇的なステージで、ゴシック・ロックの先駆者として絶大な人気を誇り、1983年の解散後も何度か再結成をしている。KIDILL 2020年春夏メンズコレクションは、バウハウスのヴォーカリスト、ピーター・マーフィーとのオフィシャルコラボレーションが実現。コレクションに使用した写真はシーラ・ロック氏によって撮影されたもの。
末安 やっぱり好きなものが1番だなって。それが服によく出ているのかもしれないですね。

「編み物☆堀ノ内さんという方に注目しています」(赤司)
「もちろん知っています。インスタをフォローしています」(末安)

赤司 ということで、そんなKIDILLさんと何ができるんでしょうかというところなんですが。ひとつ考えたのは、うちでKNIT GANG COUNCILというブランドがあって。ニットデザイナーの編み物☆堀ノ内さん<※6>という方がいらっしゃるんですけれども。
<※6>1967年、神奈川県生まれ。桑沢デザイン研究所卒業後、グラフィックデザイナーを生業としながら一点ものの編み物作品を発表。近年は岡村靖幸氏のツアーグッズのセーター製作や、メディコム・トイとのコラボレーションによるKNIT GANG COUNCILでも注目を集める。https://www.amimono.tokyo/
末安 もちろん知っています。インスタもフォローしていますし、あの人が作っているものはほとんど把握しています。
赤司 さすがです。KNIT GANG COUNCILとKIDILLのコラボレーションをぜひやりたいと思っていまして。
末安 それめちゃくちゃやりたいです! 
赤司 これぞ華麗なるプレゼン(笑)。たぶんものすごく相性いいだろうなと思って。
末安 あの方の作品、本当いいですよね。個人でやられているんですか?
赤司 そうです。ひとつひとつ手で作ってらっしゃって。有名なのは松田聖子、たのきんトリオ、横山やすし。オバQの背中に魔太郎が乗っているのとか普通の人が見たら何がおかしいかわからないけど、かなりヤバい(笑)。ちょっとひねったパンクなんです。しかも趣味でやっているからライセンスをとってないんです。
末安 怒られないんですか?
赤司 『メシ喰うな!』のジャケットのセーターをご覧になった町田康さんに「よくできてる」って言われたそうです。その後、うちで徳間ジャパンに許可を取って、オフィシャルでうちの展示会に並べたんです。彼はもともとグラフィックデザイナーで、末安さんと同じく服飾のバックボーンはないんですよ。どこかで学んだわけじゃなく全部独学でやっているんです。
末安 あれ独学でやっているんですか! めちゃくちゃ時間がかかっていますよね。写真を見る限り、仕上がりがハンパなく精密じゃないですか。ちゃんと機械でやっているんだろうなと思って。
赤司 すごく精巧な機械を使って作っています。
末安 工場にあるようなものとは違うものですか?
赤司 工場に見せたら「こんな大変なもの作りたくない」って言われました(笑)。映画の『シャイニング』とか『時計仕掛けのオレンジ』をモチーフしたものとか。
末安 あれも堀ノ内さんによるものなんですか? メディコム・トイさんから出ていることは知っていましたが、二人の女の子が立っているのとか、ヤバいとこきたなぁと思っていて。
赤司 あのプロデューサーが堀ノ内さんなので、末安さんの感性と堀ノ内さんのテクニックを掛け合わせたものができたら、いいなと思って。例えば、今度KIDILLのBE@RBRICKを出すじゃないですか?<※7> NY在住の日本人イラストレーターERI WAKIYAMAさんとコラボしたBAT & ROSEの柄でモヘアのストールとか作りたいな、なんてちょっと思っているんですけど。

BE@RBRICK KIDILL × ERI WAKIYAMA BAT & ROSE Pink 100% & 400%
BE@RBRICK KIDILL × ERI WAKIYAMA BAT & ROSE White 100% & 400%
BE@RBRICK TM & © 2001-2019 MEDICOM TOY CORPORATION. All rights reserved.
<※7> ●各全高約70mm/280mm
●KIDILL 2020SSより象徴的なアイコンBAT & ROSEのBE@RBRICKが同期展開! テキスタイルデザイン:ERI WAKIYAMA
●KIDILL直営店、メディコムトイ直営店ほかにて2020年1月発売予定。各¥16,500(税込)


※監修中のサンプルを撮影しております。発売商品とは一部異なる場合がございます。
問合せ先/メディコム・トイ ユーザーサポート TEL:03-3460-7555

末安 めっちゃかわいいですね。豪華だし、とりあえず欲しい。
赤司 欲しいものを作るのが大事なので。『STYLEVOICE.COM』の読者の方の目にも留まりやすいでしょうし、KIDILLのブランドネームを知っていただくいい機会にもなるかなと思って。じゃあ、早速進めましょう。来年秋冬の立ち上がりに出せるように。またいろいろとご提案させていただくと思うので、今後ともよろしくお願いします。
末安 ぜひぜひ。
赤司 来季のコレクションも楽しみにしていますので。
末安 次はすごいですよ。ついにこの人とやれる日が来たか、と思っていて。
赤司 えっ、そうなんですか? ……すみません、もうちょっとだけお話聞かせていただいてもよろしいですか?(笑)

>>1月中旬公開の後編へ続く



KIDILL ROOM
東京都渋谷区神宮前6-19-16 U-natura101号
TEL:03-6427-2237
営:12:00〜20:00
URL:http://kidillroom.com/

株式会社メディコム・トイ
代表取締役社長

赤司竜彦さん

1996年、株式会社メディコム・トイを設立。
2000年、自社商標のブロックタイプフィギュア「KUBRICK」(キューブリック)、2001年にはクマ型ブロックタイプフィギュア「BE@RBRICK」(ベアブリック)を発表し、世界中のアーティスト、ブランド、企業、キャラクターなどと多彩なコラボレーションを発信し続けている。
photo:Masako Nakagawa

  • PHOTO&EDIT:Daisuke Udagawa(M-3)
  • TEXT:Kunihiko Shinno
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